宝石神話:八月『橄欖(かんらん)の髪飾り』
2
5
戦女神と軍神は、衝突の多い事で有名だった。
共に戦を司る姉弟神。しかし性質は真逆である。叡智と正義を重んじ、戦略上手と謳われる姉に対し、弟は残虐で粗暴。力と肉体に恃むところが大きかった。
論戦はむろん、武器を取っても叩きのめされる。素手で挑めば、組む前に躱される。盤戯は裸に剥かれ泣きを見る。勝負の度、周囲の失笑と屈辱だけが募った。
先日、美の女神との不貞が発覚、軍神は大神に叱責された。
無様な虜囚の憂き目を見、赤恥をかいた挙句である。何故己ばかり貧乏籤なのだ。戦神の地位にしても、姉さえおらねば、この身が独占出来たはず――
鬱屈を連ねる路、橄欖(かんらん)の陰に地味な栗毛。編んだ髪に枝が絡んでいる。
同じ女神でこうも違うか。嘆息して近付き、それが精巧な宝飾と知る。隣の男が、妻を寝取られた醜い夫と知る。二言三言、横顔が呟く。
足早に引き返しながら、軍神は路沿いの橄欖を根こそぎへし折った。
共に戦を司る姉弟神。しかし性質は真逆である。叡智と正義を重んじ、戦略上手と謳われる姉に対し、弟は残虐で粗暴。力と肉体に恃むところが大きかった。
論戦はむろん、武器を取っても叩きのめされる。素手で挑めば、組む前に躱される。盤戯は裸に剥かれ泣きを見る。勝負の度、周囲の失笑と屈辱だけが募った。
先日、美の女神との不貞が発覚、軍神は大神に叱責された。
無様な虜囚の憂き目を見、赤恥をかいた挙句である。何故己ばかり貧乏籤なのだ。戦神の地位にしても、姉さえおらねば、この身が独占出来たはず――
鬱屈を連ねる路、橄欖(かんらん)の陰に地味な栗毛。編んだ髪に枝が絡んでいる。
同じ女神でこうも違うか。嘆息して近付き、それが精巧な宝飾と知る。隣の男が、妻を寝取られた醜い夫と知る。二言三言、横顔が呟く。
足早に引き返しながら、軍神は路沿いの橄欖を根こそぎへし折った。
ファンタジー
公開:19/02/02 08:00
誕生石と神話
八月:橄欖石(ペリドット)
知恵と戦の女神アテナと
軍神アレス
※橄欖はオリーブの樹です
創樹(もとき)と申します。
葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書きもどきをしております。
小石 創樹(こいわ もとき)名にて、AmazonでKindle書籍を出版中。ご興味をお持ちの方、よろしければ覗いてやって下さい。
https://amzn.to/32W8iRO
ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.13執筆&編集
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。
【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞 2022年6月作品集出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞
第二回ひなた短編文学賞 双葉町長賞
いつも本当にありがとうございます!
ログインするとコメントを投稿できます