レイン棒

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「雨が落ちる時、一本の縦線に見えるだろう?あの瞬間を切り取って固めて、できたものがこのレイン棒さ」
自信満々に胸を張る兄には悪いが、どう見てもただの透明なプラスチックの棒にしか見えない。
「ネーミングがダサいよ」
そう言えば、なぜか兄は悲しそうな顔をした。
「お前、雨好きじゃん」
「マラソン休めるからね」
「雨音聞くと落ち着くって」
「流行りのアイドルソングよりは好きだね」
兄は、手に持っていた白い袋をひっくり返した。中からは同じような透明の棒が沢山出てきた。
「これを上から落として雨に戻せば、晴れの日でも雨を楽しめると思って」
しゅんとした兄の顔を見ると、何だか私が悪いような気がしてくる。
わかったよと返して、私は兄に雨音を聞かせてほしいと頼んだ。
任せろと声を張る兄を無視して、私は部屋を出た。
「あ!何で出ていくんだよ!」
「だって雨に戻すんでしょ?濡れるのは嫌だから、傘持ってくるの」
その他
公開:19/02/01 21:00

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