宝石神話:二月『酒精と陽気』

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道化者の酒神は、真面目な太陽神が苦手だった。
天の丘に肩を並べながら、享楽と退廃の申し子である酒神と対照的に、才芸に溢れ、見目麗しい太陽神は、常に皆の中心にあった。
持って生まれた性質は否めない。だが、太陽神は堅過ぎる。例えば、酒神が宴席で余興を演じる。太陽神は、その意味する所について解説を求める。己の冗談を講釈する程、白ける事はない。笑えとは言わぬから、せめて口を噤んでくれぬものか――。

ある時、腹に据えかねた酒神は、太陽神の頭へ葡萄酒の樽をぶちまけた。
白い衣が紫に染まり、金の髪は顔にへばり付いた。酒を滴らせ、樽を被ったまま歩み寄る太陽神――身構えた酒神の眼前で、酒臭い衣が舞う。鼻歌混じりの衣擦れと、女神達の悲鳴。

翌日の太陽神は、周囲から遠巻きにされながら、普段の堅物だった。
酒神は彼に、悪酔いを防ぐ紫水晶の杯を贈った。
全裸の樽頭に歌いながら追い回されるのは、金輪際御免である。
ファンタジー
公開:19/02/02 02:00
更新:19/02/01 00:54
誕生石と神話 二月:紫水晶(アメジスト) 太陽神アポロンと 酒の神ディオニュソス

創樹( 富山 )

創樹(もとき)と申します。
葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書きもどきをしております。
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ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.13執筆&編集
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。

【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞 2022年6月作品集出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞
第二回ひなた短編文学賞 双葉町長賞

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