踏み出したら止まらない♪

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「あはは、日が暮れちゃうよ。ゆっくり縫うならちゃんと手縫いしな」
 縫製職人の母が笑う。小学校の宿題に出た雑巾を睨みつけて、わたしは強めにペダルを踏んだ。
 ドドド!
 凄い音と振動と一緒に雑巾まで暴れ出して、わたしは心臓が止まるかと思った。
「迷っちゃ駄目。踏んだらゴールまで一気に踏みな。お手本見せるから、よく聴いて」
 ♪ダダダダ♪ダダダ♪ダダダダ♪──

 ──♪
 服飾学校の自習室に一台だけある旧式ミシン。わたしは課題のたびにこのミシンを選ぶ。使い込むたびお互いの鼓動が寄り添って、踏めば踏むほどスピードが増した。だいぶ近づいたかな。
 一息つこうと立ち上がると、ボビンが落ちてころころ逃げた。慌てて糸を手繰っていくと、彼がボビンを拾い上げた。
「ミシンの音、すごく綺麗ですね」
 ──♪
 彼が赤いボビンを差し出すと、わたしの中でミシンが鳴った。踏んだら一気に。卒業なんて待てない!
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公開:19/01/30 13:07
更新:21/02/22 17:21
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