日記の理由

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2月14日
 意識不明で運び込まれた彼は、古い日記帳を胸に抱いていて、その日記に頻繁に登場するKに連絡が行き、彼女は既婚でしたが、卒業以来10年も会っていない彼のもとへ駆けつけました。私はKから、彼の入院を聞かされたのです。
 彼は、意識が戻ると日記を開き、最初から最後まで丁寧になぞり終えると昏倒し、意識が戻るとまた、同じことを繰り返していました。
 その最後の日付は、私が彼に告白した日なのですが、目の前にいた私のことは、一行も書かれてありません。連綿と綴られるのは、現れないKへの想い、呪詛、懇願ばかり…
 彼は、そのような日記をなぞり続け、金属光沢すら帯びた文字の連なりは、呪詛のようにKの現実をも取り込んでしまったのでしょう。
 Kまでもが、私が誰なのかを忘れてしまって思い出そうともしません。Kの夫も離婚の準備を始めたようです。
 だから私も入院して、日記を書き始めようと決めたのです。
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公開:19/02/01 16:12

新出既出

星新一さんのようにかっちりと書く素養に乏しく、
川端康成さんの「掌の小説」のように書ければと思うので、
ショートショートとはズレているのかもしれないです。
オチ、どんでん返し、胸のすく結末。はありません。
400文字、おつきあいいただければ幸いです。

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