三つと、手と、赤
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外に出られない妻が、編み物を始めた。
「何編んでるの?」
「手袋」
細い赤の毛糸。掌に収まる、小さな小さな――3本指?
「ミツユビナマケモノ?」
「カエルさん。試作品なの」
ベッドの枕元に、けろりとぼけた黄緑。ゲームセンターのクレーンで取った、お付き合いの記念品。
黄緑の指に、赤い手袋。似合うかも知れないが……
「もっと大きいので練習すれば?例えば俺用とか」
「それは来年までお預け」
「ちぇ、けち」
布団の上の毛糸玉が、とことこ揺れる。
「本番は、5本指?」
「まだ早いよ。1と、大きい1」
――とことこ、とこん。
「ほら、それでいいって」
「出来た♪……貴方、何してるの?」
「カエルさんに願掛け。どうか守って下さいって」
2人とも、無事に帰る様に。
3人手を繋いで、こんな風に、赤い絆を重ねて行ける様に。
もうじき会える3つめの手と、お腹越しに握手。
今日が300日目のプレ・バースデー。
「何編んでるの?」
「手袋」
細い赤の毛糸。掌に収まる、小さな小さな――3本指?
「ミツユビナマケモノ?」
「カエルさん。試作品なの」
ベッドの枕元に、けろりとぼけた黄緑。ゲームセンターのクレーンで取った、お付き合いの記念品。
黄緑の指に、赤い手袋。似合うかも知れないが……
「もっと大きいので練習すれば?例えば俺用とか」
「それは来年までお預け」
「ちぇ、けち」
布団の上の毛糸玉が、とことこ揺れる。
「本番は、5本指?」
「まだ早いよ。1と、大きい1」
――とことこ、とこん。
「ほら、それでいいって」
「出来た♪……貴方、何してるの?」
「カエルさんに願掛け。どうか守って下さいって」
2人とも、無事に帰る様に。
3人手を繋いで、こんな風に、赤い絆を重ねて行ける様に。
もうじき会える3つめの手と、お腹越しに握手。
今日が300日目のプレ・バースデー。
その他
公開:19/01/30 03:00
更新:19/01/30 01:03
更新:19/01/30 01:03
スリー+ハンド+レッド記念
創樹(もとき)と申します。
葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書きもどきをしております。
小石 創樹(こいわ もとき)名にて、AmazonでKindle書籍を出版中。ご興味をお持ちの方、よろしければ覗いてやって下さい。
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ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.13執筆&編集
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。
【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞 2022年6月作品集出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞
第二回ひなた短編文学賞 双葉町長賞
いつも本当にありがとうございます!
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