スノーバージン

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初めての体験は特別なものにしたいの。
見渡す限り白銀の世界で、誰の足跡もない新雪を、新品のブーツで踏みしめるのよ。
さくっさくって心地よい音を響かせながら歩いて、10歩歩いたあとでおもいっきり雪にダイブしたいわ。

そんな彼女のわがまま……失敬、願望を叶えるべく、僕は真冬の北海道を訪れた。
隣で微笑む彼女は大層嬉しそうだ。この日のために新調してきたブーツとコートを何度も何度も確認している。さて、いざ行かんと足を一歩踏み出した。

さくっと心地よい音が響いた。一先ずここまでは彼女の願望通りだ。しかし二歩、三歩、四歩歩いたところで突然戻ってきた。
ダイブするんじゃなかったのか。

「さ、寒い!」

鼻水を垂らしてそう叫ぶ彼女がおかしくて、僕は彼女の手を引いて雪にダイブした。
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公開:19/01/28 22:15

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