妻のような気もする
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身震いひとつ。今朝は寒い。ベッドを降り、手探りで暗い部屋を横切り、明るい方へ出た。
裏の畑を見てこなければ。この寒さでは土が凍ってしまう。ああ、失敗した。昨日のうちに覆いをしておくんだった。まったく耄碌したもんだ。
ガラッと扉を開けると、後ろから「どうしました?」
心臓が跳ねた。よたよた振り向くと、にっこりと女が笑う。
「あのなぁ、裏の畑を見てこんきゃならんのよ」
「あらそう。でもねぇ、そこは裏口じゃないですよ。それにまだ暗いから、朝にしたら」
「百姓は暗いうちから起きるもんだ! 覆いをしなくちゃ苗が駄目になるだろ、馬鹿!」
「あら、大変。じゃあ、私が代わりに覆いをしといてあげるから、ベッドに戻りましょう」
「できるのか」
「農家の生まれですから」
「そうか。……近頃めっきり足腰が弱くてな。頼むよ」
「はいはい」
ベッドの中で、あの親切な女が誰なのか考えたが、どうにも思い出せなかった。
裏の畑を見てこなければ。この寒さでは土が凍ってしまう。ああ、失敗した。昨日のうちに覆いをしておくんだった。まったく耄碌したもんだ。
ガラッと扉を開けると、後ろから「どうしました?」
心臓が跳ねた。よたよた振り向くと、にっこりと女が笑う。
「あのなぁ、裏の畑を見てこんきゃならんのよ」
「あらそう。でもねぇ、そこは裏口じゃないですよ。それにまだ暗いから、朝にしたら」
「百姓は暗いうちから起きるもんだ! 覆いをしなくちゃ苗が駄目になるだろ、馬鹿!」
「あら、大変。じゃあ、私が代わりに覆いをしといてあげるから、ベッドに戻りましょう」
「できるのか」
「農家の生まれですから」
「そうか。……近頃めっきり足腰が弱くてな。頼むよ」
「はいはい」
ベッドの中で、あの親切な女が誰なのか考えたが、どうにも思い出せなかった。
ミステリー・推理
公開:19/01/28 18:55
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