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父の話をするのは苦手だ。
よく、酔っ払って帰ってきて、高そうなマフラーやストールをあたしにくれた。酒臭くて香水の匂いもする。こんな物いらないと、反抗した。
飲んだ次の日は、夕方まで部屋から出てこない、近づくことさえ許されなかった。そんな父に、母はただ黙って従うだけだった。
それは高1の頃だ。相変わらず父は部屋から出てこない。母が作った朝食が冷えている。
「親父!いつまで寝てんだよ!」あたしはついに部屋を開けてしまった。
「バカヤロー!何で開けたんだ!」
父の声はしたが、そこにいたのは一羽の鶴だった。鶴の前には織り機があり高そうなストールが織られている。
「父さんはね、これを売ってあたし達を養ってくれてたんだよ。」母は泣きながら言った。
「正体がバレた以上はお別れだ。」そう言うと父は、空高く飛び去った。
酷い父親だと思う。でもね、冬になると思うんだ。もしかしたら、帰ってくるんじゃないかと。
その他
公開:19/01/29 14:32
更新:19/01/30 10:40

鳥谷尾 吉( 千葉 )

田丸先生の講座を受講したことをきっかけに、ショートショートを書き始めました。表現するのは楽しいですね。末永く、書き続けていくのが今の目標です。
 

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