エーデルワイス

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「あたしね、こんなに素敵な人がこの世界にいるなんて知らなかったって思って、毎日が本当に楽しくてね。」
エーデルワイスさんはニコニコしながら昔の恋人の話をし出した。
「鼻筋の通った品のいい顔で、おまけに将校だったの。でもね、私の前ではよく冗談を言ったし、おっちょこちょいなところもあってね。」
暖炉にはチロチロと火がともり、炙っていたチーズからいい匂いがする。
「彼と別れた時は二度と恋なんかするもんかって、雪崩が起こるくらい泣いたわ。でもね、不思議なものでこの歳になると、彼に会えてよかった、あんな素敵な思い出があってよかった、て、凄く思うの。」
そう言いながら彼女はパンにチーズをつけ、僕に手渡した。
それにしても眠い。いや、寝ちゃだめだ。ここはマッターホルンで僕は雪崩に巻き込まれたのだ。朦朧とする意識の中、目の前に小さな白い花が咲いているのが見える。エーデルワイス。僕の一生は輝いていたのかい?
その他
公開:19/01/27 13:52
更新:19/01/28 09:11

鳥谷尾 吉( 千葉 )

田丸先生の講座を受講したことをきっかけに、ショートショートを書き始めました。表現するのは楽しいですね。末永く、書き続けていくのが今の目標です。
 

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