夜のコンビニで君と

夜のコンビニでいつも、君は待っていた。
残業で遅くなった僕を、店の軒下で出迎える。ビールとチューハイを一本ずつ買って、僕のアパートまで一緒に歩く。忙しい日々の中、それが僕の大切な時間だった。
秋が過ぎ冬が来て、今年一番の大雪が降った。僕の乗った電車が二時間遅れた、その日も君は待っていた。マフラーにコート、髪にうっすらと積もる雪。かじかんだ指先を、コーヒーで暖めながら。
君にこれ以上、寒い思いをさせたくない。僕は合鍵を作った。今日だけはと仕事を切り上げて、コンビニへと急いだ。
もう待たなくてもいいんだよ。言った僕の目の前で、君は泣き出した。
ごめんなさい。他に好きな人が出来たの。本当にごめんなさい。
僕は混乱する。君はいつだって、ここで僕を待っていたのに。なのにどうして。
ドアを開けた君に、男の手がそっとコーヒーを差し出す。涙に濡れた顔で君は笑う。青い上っ張りを着た、コンビニの店員に。