明日の君を忘れないように
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「お父さん、私はもう疲れました」
認知症の父親の傍らで、介護にあたる母親はぼそりと呟き、父親の前髪をかきわけた。
「本当に、私達の青春時代にもう一度だけ戻りたい」
母親は、机の上に置いていた紅茶を淹れたカップを両手で持ち、一口啜った。
父親は無意識に母親の手を握った。
「ごめんな。幸子・・・俺が元気だったら、公園にでも出かけて、白鳥でもみせてあげたいんだがな」
父親は一筋の涙を流す。
「いいえ、ゆっくりやすんでください」
母親は、父親の手を両手で強く握った。
「俺はな。幸子が哀しい顔はみたくない。でも、俺はもうどうすることもできない。ただ、今日を忘れて生きて、明日のお前を見つめている」
母親は首を横に振る。
「こちらこそごめんなさい」
母親は父親の手を握った拳を額にあて、悟られないよう涙を流した。
認知症の父親の傍らで、介護にあたる母親はぼそりと呟き、父親の前髪をかきわけた。
「本当に、私達の青春時代にもう一度だけ戻りたい」
母親は、机の上に置いていた紅茶を淹れたカップを両手で持ち、一口啜った。
父親は無意識に母親の手を握った。
「ごめんな。幸子・・・俺が元気だったら、公園にでも出かけて、白鳥でもみせてあげたいんだがな」
父親は一筋の涙を流す。
「いいえ、ゆっくりやすんでください」
母親は、父親の手を両手で強く握った。
「俺はな。幸子が哀しい顔はみたくない。でも、俺はもうどうすることもできない。ただ、今日を忘れて生きて、明日のお前を見つめている」
母親は首を横に振る。
「こちらこそごめんなさい」
母親は父親の手を握った拳を額にあて、悟られないよう涙を流した。
その他
公開:19/01/26 19:50
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