峠の下りに

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「危ないから絶対止まるなよ」
運転している俺に声がかかる。窓の外は猛吹雪。ハンドルを握る手の震えが止まらなかった。視界は白い光に包まれ、何にも見えない。でもその中で何か蠢く影があった。
それは人だ。若かりし頃の父や母がいる。故郷の人達が俺の出迎えで溢れている。こんな狭い峠に押し寄せてくる。
「大丈夫、幻だから気にするな」
助手席から先輩の声がした。
「吹雪は前が見えないから不安だよな。反対車線の車のライトに気をつけろよ」
バックミラーを見て、声の方を見た。勝君がこっちを見てる。
「あの日もこんな雪だったな」
人々は車が見えていないのか、峠道をうろついている。視界の悪さで俺は何度も人を引いた。
「大丈夫。人なんかはねてない。スピードを緩めるなよ。雪にまかれて迷子になるぞ」
確かな感触に俺はタバコを吸わずにはいられない。
先輩と勝君は死んでいる。
俺の事故にひかれて亡くなった。
こいつら誰だ?
ホラー
公開:19/01/28 08:08

風月堂( 札幌 )

400文字の面白さに惹かれて始めました!
文字や詩のようなものを書くのが趣味です。
情緒不安定気味でアゲサゲ落差のひどい人間ですw
いろんな方々の作品を読んで、心を豊かにしていきたいです。

無料の電子書籍をつくりました。
『ショートショート作品集カプセルホテル【】SPACE』
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『枇杷の独り言』
ショートショートコンテスト『家族』最優秀賞頂きました。

写真は全て自前でやっています(笑)

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