鯨に散華

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海底に眠る鯨の墓を覆って、手向けにも映る、紅い花が咲いている。
細い指を思わせる花弁を、招く様にそよがせる彼女達は、骨喰い花虫(ほねくいはなむし)。命を終えた鯨の骨に寄生する、深海生物である。

花下に張った根で、骨を融かし、ゆっくり吸収して生きる。
ひらめく指は全て雌で、雄は彼女達の付属物に過ぎない。広大な躯をテーブルに、午後のお茶でも楽しむ風に談笑しながら、更に広大な海原を泳ぎきった、老鯨の長旅に耳を傾けながら、最期の花道を彩り、自然に還していく。一頭の鯨が藻屑と化すのに、数十年。入れ替わり立ち代わり、咲いては散り、散っては開くサイクルを繰り返す。

残酷な営みだと思うだろうか。
骨喰う花々に限らず、生命は連鎖の路を巡る。海で生まれた鯨は海へ回帰し、多くの命を養う苗床となる。
夜より昏い水の帳に揺れる紅は、鯨から受け継いだ、血の色であるのかも知れない。

――あぁ、また新しい花が咲く。
その他
公開:19/01/25 08:07
更新:19/01/25 05:26
深海生物シリーズ③ 骨喰い花虫(ほねくいはなむし)

創樹( 富山 )

創樹(もとき)と申します。
前職は花屋。現在は葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書き(もどき)をしております。

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