蛍の泳ぐ海
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海を泳ぐ蛍を、見た事があるだろうか?
ウミホタルという発光貝虫も存在するが、あれは漂うに近く、泳ぐとは言い難い。
海底付近の冷たい水を遊泳する、別の蛍の話である。
蛍烏賊(ほたるいか)。指で摘める小さなイカで、普段は深海に住み、産卵期に浮上する。春から初夏に漁獲され、俳句の季語にもなっている。
普段の彼らが、光りながら泳いでいるわけではない。敵に遭遇した時、通常のイカは墨を吐いて逃れるが、暗い深海で、その手は通じない。
だからこそ、光る。彼らの燐光は、人間の目には蛍の如き儚いものだが、闇に慣れた者達には、カメラのフラッシュに等しい目眩まし。恋を語る為でなく、いざという時の奥の手として、命の焔を秘めている。
網に絡め取られ、青く瞬く光点を見る度、彼らの『悲鳴』を目にする度、物憂い感傷に捕われる。
今年もじき、彼らが店に並ぶ季節が訪れる。
そして私自身、その幾らかを買い、食卓に上げるのだ。
ウミホタルという発光貝虫も存在するが、あれは漂うに近く、泳ぐとは言い難い。
海底付近の冷たい水を遊泳する、別の蛍の話である。
蛍烏賊(ほたるいか)。指で摘める小さなイカで、普段は深海に住み、産卵期に浮上する。春から初夏に漁獲され、俳句の季語にもなっている。
普段の彼らが、光りながら泳いでいるわけではない。敵に遭遇した時、通常のイカは墨を吐いて逃れるが、暗い深海で、その手は通じない。
だからこそ、光る。彼らの燐光は、人間の目には蛍の如き儚いものだが、闇に慣れた者達には、カメラのフラッシュに等しい目眩まし。恋を語る為でなく、いざという時の奥の手として、命の焔を秘めている。
網に絡め取られ、青く瞬く光点を見る度、彼らの『悲鳴』を目にする度、物憂い感傷に捕われる。
今年もじき、彼らが店に並ぶ季節が訪れる。
そして私自身、その幾らかを買い、食卓に上げるのだ。
その他
公開:19/01/25 04:00
深海生物シリーズ②
蛍烏賊(ほたるいか)
創樹(もとき)と申します。
葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書きもどきをしております。
小石 創樹(こいわ もとき)名にて、AmazonでKindle書籍を出版中。ご興味をお持ちの方、よろしければ覗いてやって下さい。
https://amzn.to/32W8iRO
ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.13執筆&編集
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。
【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞 2022年6月作品集出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞
第二回ひなた短編文学賞 双葉町長賞
いつも本当にありがとうございます!
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