小口絵

32
51

側面が綺麗な模様の外国の本がある。大学図書館のリサイクル市などで手に入る。その模様はまるで孔雀のように艶やかで、だけど柔らかい色づかいで、眺めていても飽きない芸術品のように美しい。

その日見つけた本を2人の手が同時に取った。1人が私、そして1人が後に親友となる彼女。結局本は彼女の物となり、私はその場で似たような本を買った。

彼女は知的で面白く、たまに不思議だった。ある日、例の本の使い道を聞くと「遺書をはさんどく」と言った。「いつか膨大な本が入る本棚を作ったら、そこに忍ばせとく。美佐が見つけてね」と。

それから68年。やっと見つけた本。遺書と書かれた封を開けると『見返しを見て』と書かれていた。見ると下の方に小さく「美佐へ」と書かれていた。たまらずその本を抱きしめた。

この星で彼女と出会った。それが大事だったのだ。宇宙船で胸に本を抱えた私は、ゆっくりと彼女のいない地球を遠ざかっていく。
公開:19/01/25 00:47
更新:19/01/25 01:23

綿津実

自然と暮らす。
題材は身近なものが多いです。

104.がおー

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容