幻想動物見物録・直哉の場合

『人魚釣り百円也』
って、で店に書いてあったの。生け簀には四角い氷しかなくて、意味不明だったんだ。その氷は七色に光りながらくるくるぷかぷかしてた。それで僕、面白そうだったからやってみたの。ぽいで七色の氷を救ってお椀に入れると、それが溶けながら形を変えたんだ。七色のクリオネみたいに、それから魚に、そして人魚になって跳ねた。
「擬態する品種の人魚なんです」って店長は言ってた。２匹家に持ち帰って早速コップに移したら、それは七色にキラキラ光りながら水の中を泳いでいた。形は様変わりして、ヤドカリになったり、イルカになったり自由なもんだ。水の中を揺らめく七色のそれは、まるでオーロラみたいなんだ。お茶に入れると七色の金魚になるし、サイダーだと人魚に戻って泡で遊び出して面白いよ。でもね、懐いてくれたのはいいんだけど２匹がよく喧嘩するようになっちゃった。独占欲強いみたい。先生、よかったら１匹いりませんか？