カット専門

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先日、仕事で嫌なことがあった。
気持ちを切り替えようと、行きつけのカット専門店を訪ねた。

「いらっしゃいませ。本日はどのようなご希望で?」
「昨日の午後14時から午後15時半までの記憶をカットしてほしい」
「かしこまりました」

馴染みの店員は頷くと、俺を席へと案内した。

椅子に座った俺は、早速後頭部からフィルムを抜き出される。
目当ての記憶をちょきんとカットして、それでおしまい。

「はい、お疲れ様でした」
「ありがとう。さっぱりしたよ。ところでどれだけカットしたんだっけな」
「1時間半でございます」

俺は金を支払うと、清々しい気持ちで店を出た。
なんでも昔は、記憶カットが存在しなかったらしい。
だから過去の記憶に悩まされて、自殺や犯罪に走る者が多く現れたとか。

そんな時代は考えられないな。
「またのお越しをお待ちしております」という店員の声を背後に、俺は家へと帰った。
SF
公開:19/01/26 16:18

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