結婚詐欺

先日、世界のピンチを幾度となく助けてきたヒーローが引退した。

なんでも恋をしたらしい。
「君だけのヒーローになりたい」という臭いプロポーズの言葉通り、引退してしまった。

世間ではヒーローの引退を惜しむ声が相次いだが、引退を取り止めることはなかった。

「これからは彼女の側にいて、安心させたいんです」

結婚会見でそう言ったヒーローは、とても幸せそうだった。
今度は命の危険が及ばない安全な仕事に就くつもりらしい。
隣ではにかむ栗色の髪を持つ女性は、とても美しかった。

その三ヶ月後、町に悪の怪人が現れた。
怪人は大暴れして、町はこれ以上ない大損害を受けた。
ヒーローは駆けつけず、警察はあっさりと返り討ちにあった。

怪人には逃げられてしまい、結局正体はわからなかったらしい。
ただひとつ、栗色の髪の毛をしていたことだけはわかった。