星のかけら

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マリさんは泥棒だ。
「それ本当の話?」
マリさんの身の上話を初めて聞いた。とっても悲しい、胸が掻き毟られるようなお話だ。
「ウソだよ」
マリさんは笑う。
「私は、下の子じゃなくて姉の方だよ」
僕はマリさんを抱きしめた。僕の腕の中でマリさんは小刻みに震えて、しずかに涙をこぼした。
真珠もダイヤもどんな名画も彫刻も時に意味をなくすんだ。いくら誰かの大事な物を盗んだって、なんにもならないんだ。小さかった僕らにとって、家が全てだったから。
でも、もういいじゃないか。僕らは自由になれるし、自分を守ることもできるよ。
僕は、マリさんの口元に人差し指でそっとピンクの金平糖を押し込んだ。
「星のかけらみたいだよね」
マリさんが言いそうなセリフを口にしながら。
ファンタジー
公開:19/01/23 11:04
更新:19/01/23 15:49

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