偽物≠贋作

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昨今の日本刀ブームに乗っかり俺も刀の仲介業をしている。名刀を持ち出しては高額で売る。
だがそれらは俺が打った偽物である。それを審美眼のないバカが買っていく。いい気味だ。
中でもある老夫婦が俺をいたく買ってくれている。俺は老夫婦の家に足繁く通った。
「いつ見ても素晴らしい輝きだ」
「ええ、立派ねぇ」
老夫婦は今日も俺の打った刀にご満悦だ。
「これだけ凄い刀が打てるんだ。そろそろ自分の紋を付けてみてはどうだ?」
!?この老夫婦、この刀が偽物だって気付いていたのか!
「そりゃそうよ。だって貴方の刀は本物より素晴らしいんですもの。だから、つい集めたくなっちゃったの」
「それにだ。これは偽物ではなく贋作だ。贋作は本物を越える必要がある。胸を張れ、君は本物の職人だ」
俺は老夫婦の家を飛び出した。
以来、あの家に行っていない。
その代わり毎年、最高の刀を送っている。刀鍛冶となった俺の、その年最高の刀を。
公開:19/01/22 18:37

幸運な野良猫

元・パンスト和尚。2019年7月9日。試しに名前変更。
元・魔法動物フィジカルパンダ。2020年3月21日。話の流れで名前変更。
元・どんぐり三等兵。2021年2月22日。猫の日にちなんで名前変更。

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