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体育館では、チームメイトがコートの中を汗水を流しながらかける音が反響していた。

体育館の中は、十年前と、全く変わっていなかった。

ボールが入ったラック、体操用のマットが体育館の隅に置かれている。

延長戦の時に、チームメイトが放ったバスケットボールがゴールを揺らし、会場が一気に湧き上がったのを思い出した。

廊下に出ると、生徒の話し声がきこえてくる。

懐かしい春の教室・・・

僕は開け放たれた窓の向こうの桜の花弁、がはらはらと舞い散るのを頬杖しながら眺めている。

そっと手を伸ばし、桜の花びらを手の平の上にのせる。

その瞬間、桜の花びらは雪の結晶になり、緑に変わった。

校門の外では、彼女が微笑みながら僕に別れを告げるために手を振っていた。
その他
公開:19/01/24 23:21

神代博志( グスク )









 

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