ワタリガラス

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 ベランダで足の爪を切っていたら、切った爪に蟻んこが群がった。蟻んこの行列が、爪をプランターの土の中に運んでいく。あんなもの食べるんだ。
 季節が変わるころ、プランターの土から脚が生えた。寒そうに垂れる真っ白な柔肌の、根っこはどうなっているんだろうと、土の中を覗こうとすると、脚は嫌がって僕の頬を足の裏で撫でた。
 お返しに足の裏をくすぐってやると、脚はカァカァ鳴いて指を震わせたりする。
 僕は脚に靴をやった。雪花硝子で仕立てた靴は、脚にとても似合った。
 喜んだ脚は嬉しそうに、干していたバスタオルをピンチハンガーからくるくる巻いてもぎ取って、空へ放った。
 蟻んこたちがパイルを漕ぐと、バスタオルは硝子の靴を乗せたまま、ひらひら空を上っていった。
ファンタジー
公開:19/01/24 16:11

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