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言葉が物の性質を定義するようになった。書き損じや変換ミスで物の中身が変わってしまうため、人々は誤字脱字に細心の注意を払い、世間では物の名前を似た漢字や同じ読みの漢字へ書き換えるいたずらが流行していた。
あるマンションで火事が発生した。
「早く火を消さないと燃え広がるぞ!消火器まだか!」
「持ってきたぞ!」
ぶしゅー、もくもく。
「おっ、焦げ臭くなくなったな」
しかし火の勢いは衰えていない。
「おいこれ、消香器って!ただの消臭剤だ!」
「こっちはどうだ?」
ぶしゅー、もくもく。
「あれ、何も変わらないな」
「なになに…消蚊器?この火じゃ虫なんか一匹もいないだろうよ!もう消火器じゃなくてもいいから、とにかくなんとかなりそうなもの持ってこい!」
「おーい、いいのがあったぞ!」
男の手には『消災器』。
ぶしゅー、もくもく。
白煙のあとには、焦げ跡ひとつない綺麗なマンションが建っていた。
あるマンションで火事が発生した。
「早く火を消さないと燃え広がるぞ!消火器まだか!」
「持ってきたぞ!」
ぶしゅー、もくもく。
「おっ、焦げ臭くなくなったな」
しかし火の勢いは衰えていない。
「おいこれ、消香器って!ただの消臭剤だ!」
「こっちはどうだ?」
ぶしゅー、もくもく。
「あれ、何も変わらないな」
「なになに…消蚊器?この火じゃ虫なんか一匹もいないだろうよ!もう消火器じゃなくてもいいから、とにかくなんとかなりそうなもの持ってこい!」
「おーい、いいのがあったぞ!」
男の手には『消災器』。
ぶしゅー、もくもく。
白煙のあとには、焦げ跡ひとつない綺麗なマンションが建っていた。
SF
公開:19/01/23 16:25
普段は病院で働くひと。
のんびり妄想したい。
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