湘南犯人ライン

逗子は始発駅だからと気を抜いていたのがいけなかった。ボックス席に一人で座っていると慌ただしい様子で大勢の警察官が駆け寄ってきた。

「13時25分、現行犯逮捕！」

突然のことに状況が掴めず、僕は警察官に尋ねた。
「刑事さん、僕が何かしましたか！」
「何かしたかだと？この湘南犯人ラインに乗っているじゃないか！」
どうやら僕は乗る電車を間違えたようだ。

「逗子で打ち合わせをして、本社に戻るところで、駅のホームに着いたらちょうど発車のベルが鳴ったので、そこに停まっていた電車に乗っただけなんです！」
「間違いで済んだら警察はいらんぞ。誰にだって過ちはある。そんな過ちを犯した自分を認めて、受け入れて生きていくしかないんだぞ」

「あんまりだ！」

手錠をかけられた僕は警察官に囲まれて電車を降りた。周囲の人々が僕の方を訝しげに見ている。

「僕は電車を乗り間違えただけで本当に何もしていないんだ！」