朝焼けジャック

6
5

東の空に朝焼け。音ひとつない静かな時間の、いったい何が気に食わないのか、あいつがまた現れる。

朝焼けジャックだ。

いつからだろう。朝焼けを見た者の耳に、パンクロックが響くようになった。どうも視神経経由で聴覚が刺激されているらしく、爆音はそれぞれの耳の中でだけ弾け、世界はしんとしたままだ。

話題が話題を呼び、早起きする者が続出した。ただ、慣れとは恐ろしいもので、人はいつしか場違いな面白さにすっかり飽きてしまった。
パンクロックは単なる環境音として世界に溶け込み、鼓膜どころか心を震わすこともなくなって、そして…今日に至る。


ゆっくりと夜が明けてゆく。

老練なシャウトに引き裂かれる空。リフレインを引き継ぐかのように、今日も鳥がさえずりを始めた。
ファンタジー
公開:19/01/20 21:59

糸太

400字って面白いですね。もっと上手く詰め込めるよう、日々精進しております。

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容