闘病

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突然襲ってきた悪寒と関節痛。私はすぐさまマスクを装着して買い物に走った。
500mlサイズのスポーツドリンクを複数本。プリンとバナナはいつも食べ切れないが、少しでも栄養を取ることが心の安定に一役買う。チューブ状のゼリー飲料は、吸う力が回復してからのエネルギー補給用だ。
一口で残してもいい。栄養は二の次。水分と口当たりの良さ、そして清潔さと手軽さを重視して小分けにパッケージされた食材を選んだ。
体温が上がるのを感じながら部屋に荷物を運び入れる。
しばらく冷蔵庫には立てない。布団から手の届くところにすべての飲食料を並べた。箱ティッシュとタオルを枕元に置き、ふらつく足で着替える。
私のトレードマークであるメガネが手前に映るよう配置して、カメラを回し始める。
間に合った。
画面上の数字がみるみる上がる。闘病の実況中継を楽しみにするファンたちに見守られながら、私は朦朧とした世界に身を投じた。
公開:19/01/22 12:02

ケイ( 長野 )

ショートストーリー、短編小説を書いています。
noteでも作品紹介しています。​​
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テーマは「本」と「旅」です。

2019年3月、ショートショートコンテスト「家族」に応募した『身寄り』がベルモニー賞を受賞しました。(旧名義)
2019年12月、渋谷TSUTAYAショートショートコンテストに応募した『スミレ』が優秀賞を受賞しました。
2020年3月、ショートショートコンテスト「節目」に応募した『誕生会』がベルモニー賞を受賞しました。

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