アシンメトリー
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札幌は雨だ。霧みたいに細かくて、傘をさすには少し大袈裟だ。そんな曇り空を俺は喫茶店から眺めていた。窓際に座る女も同じように見上げている。横顔と短髪から覗くうなじのラインが綺麗だ。彼女は右目に手を添えた。
ぐりっと、目玉を引き抜いた。俺はギョッとして固まった。女はコンタクトレンズを見るように、その扁平型の義眼を眺め、それから形のいい唇を突き出して息を吹きかけた。義眼が曇り、それを丁寧に拭いている。
その手つきが艶かしくて、茫然と見ていたらうっかり水を落としてしまった。パリンと割れた音で彼女がこちらを見る。ぽっかり空いた空虚な眼窩とぱっちり開いた愛嬌のある左目。その間を流れるくっきりとした鼻筋。その下をぷっくらとした唇が驚きのままに半開きになっていた。
「お怪我はありませんか」
気まずい空気の中をウェイターが横切る。気づけば彼女の姿はない。だけど俺は、彼女の素顔の美しさに恋をしてしまっていた。
ぐりっと、目玉を引き抜いた。俺はギョッとして固まった。女はコンタクトレンズを見るように、その扁平型の義眼を眺め、それから形のいい唇を突き出して息を吹きかけた。義眼が曇り、それを丁寧に拭いている。
その手つきが艶かしくて、茫然と見ていたらうっかり水を落としてしまった。パリンと割れた音で彼女がこちらを見る。ぽっかり空いた空虚な眼窩とぱっちり開いた愛嬌のある左目。その間を流れるくっきりとした鼻筋。その下をぷっくらとした唇が驚きのままに半開きになっていた。
「お怪我はありませんか」
気まずい空気の中をウェイターが横切る。気づけば彼女の姿はない。だけど俺は、彼女の素顔の美しさに恋をしてしまっていた。
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公開:19/01/21 23:44
オチはありません。
続きません。
400文字の面白さに惹かれて始めました!
文字や詩のようなものを書くのが趣味です。
情緒不安定気味でアゲサゲ落差のひどい人間ですw
いろんな方々の作品を読んで、心を豊かにしていきたいです。
無料の電子書籍をつくりました。
『ショートショート作品集カプセルホテル【】SPACE』
a.co/1VIyjHz
『枇杷の独り言』
ショートショートコンテスト『家族』最優秀賞頂きました。
写真は全て自前でやっています(笑)
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