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僕は家畜を育てる仕事を生業にしている。
とは言っても、一般的なそれとは少し違う。
僕がいる農場では、本を育てて出荷しているのだ。
品種も様々で、塗工紙、微塗工紙、非塗工紙、コート紙にアート紙などがある。
その中でも僕が育てているのは、非塗工紙と呼ばれる品種。
この品種は、いわゆる書籍と呼ばれる分類の本に成長する。
餌はインク。
餌を食べさせる時期やその量によって、育った本の内容が変化するのが興味深い。
落語や有名な小説の朗読CDを聞かせたりもする。

今回も無事、出荷が終わった。
空になった飼育場所を掃除しなければ。
ほんの少し寂しさを抱きながら掃除をしていると、飼育場所の端っこに本のフンを見つけた。
本は、自分のなかの文字をフンとして排泄する。

そこに落ちていたフンは五文字。

あ・り・が・と・う

僕は目に涙を浮かべて、思う。

……ああ、また落字ありましたよって指摘を受けるな。
その他
公開:19/01/21 22:58

たけなが


たくさん物語が作れるよう、精進します。
よろしくお願いします!

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