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「私がスノータイヤ君の所に行ってもいいの?」
僕に「行くな」と言って欲しい事はわかっていた。
「でも、僕が君の側に行くと、沢山の人に迷惑がかかるんだ」
「スパイクタイヤ君はいつもそう!グリップ力が強くて、ブレーキをかけてばっかり!」
仕方ないじゃないか。だって君のいる所には雪が無い。僕が行けば、きっとアスファルトを削って、道路を凹ませ、粉塵が飛散してしまう。
「周りの事なんかどうでもいいって言って欲しかった…」
僕は去っていく彼女の後ろ姿を見送る事しか出来なかった。

それから、僕は自分を変えようと決意した。今のままじゃ雪が無い所で走れない。まずはスパイクを抜いて、グリップ力が落ちないように溝を改良して。
そうして僕はスタッドレスタイヤに生まれ変わる事が出来た。
でも、僕の側に君はもういない。
真っ白なゲレンデを見上げて溜め息をこぼした。

「久し振りだね」

不意に声がして僕は振り向く。
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公開:19/01/19 09:21
スクー ゲレンデがとけるほど 恋したいスタッドレス

のりてるぴか( ちばけん )

月の音色リスナーです。
ようやく300作に到達しました。ここまで続けられたのは、田丸先生と、大原さやかさんと、ここで出会えた皆さんのおかげです。月の文学館は通算24回採用。これからも楽しいお話を作っていきます。皆さんよろしくお願いします。

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