至福のひととき

週替わりで名画がレンタル出来る時代となり、今僕の部屋にあるのはアングルの「グランド・オダリスク」。
「この一週間楽しかったよ」
「私の方こそ、素敵な紳士とお話し出来て幸せだったわ。また会えるのを楽しみにしてるわ」
僕は絵の中の人物と会話が出来る。
裸の女性と一週間話すなんてと思っていたが、紳士的に振る舞えて良かった。僕にもまだそんな所が残っていたなんて嬉しい発見だ。

今週はミレー「晩鐘」を選んだ。
「君たちは何をしているんだい？」と僕は疑問に思う所から聞いてみた。
会話が出来る事に驚きを見せるが皆、100年以上の沈黙から堰を切ったよう話し出す。
「僕らは教会から聞こえる夕刻の鐘に合わせて祈りを捧げているところさ」
当時の状況や政治不安、貧しくもなんとかやっていると夜通し話してくれた。この時代の話は気が滅入る。
「でも妻には新しい生命が宿っているんだ」
と最後に僕に優しく伝えてくれた。