君とお酒を④
4
3
飲みつけの店の衝立席、儚げに佇む婦人一名。
白銀の九十九髪。梅花の縮緬の小袖。奥ゆかしい風情。
決して目を惹く美女ではない。けれど、気が和む。
「ご婦人、お名前は?」
「……梅と申します。貴方は?」
はにかんだ口元。淡く上気した頬。名前を訊かれたのは初めてだ。
「僕は、松竹です。宜しければ、一杯やりませんか?」
「年寄りをからかうものじゃございませんわ」
「僕も百八歳だ。失礼ながら貴方の方が、十はお若く見える」
「その齢では成れませんの。御存知でらっしゃいましょう?」
結い上げた白髪を、カクテルライトが虹色に煌めかせている。
「この夜と、僕らの出会いに乾杯を」
差し出した手へ、ややためらいがちに重なる。
かち。グラスより柔らかく、音が触れ合った。
「やっと出会えた……」
衝立席のテーブルに、寄り添って並ぶ二客。
図柄の違うそれは、あたかも一対の夫婦茶碗の様だった。
~Fin.
白銀の九十九髪。梅花の縮緬の小袖。奥ゆかしい風情。
決して目を惹く美女ではない。けれど、気が和む。
「ご婦人、お名前は?」
「……梅と申します。貴方は?」
はにかんだ口元。淡く上気した頬。名前を訊かれたのは初めてだ。
「僕は、松竹です。宜しければ、一杯やりませんか?」
「年寄りをからかうものじゃございませんわ」
「僕も百八歳だ。失礼ながら貴方の方が、十はお若く見える」
「その齢では成れませんの。御存知でらっしゃいましょう?」
結い上げた白髪を、カクテルライトが虹色に煌めかせている。
「この夜と、僕らの出会いに乾杯を」
差し出した手へ、ややためらいがちに重なる。
かち。グラスより柔らかく、音が触れ合った。
「やっと出会えた……」
衝立席のテーブルに、寄り添って並ぶ二客。
図柄の違うそれは、あたかも一対の夫婦茶碗の様だった。
~Fin.
ファンタジー
公開:19/01/17 00:00
更新:19/01/16 23:50
更新:19/01/16 23:50
夜の住人達のラブゲーム
④付喪神
創樹(もとき)と申します。
葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書きもどきをしております。
小石 創樹(こいわ もとき)名にて、AmazonでKindle書籍を出版中。ご興味をお持ちの方、よろしければ覗いてやって下さい。
https://amzn.to/32W8iRO
ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.13執筆&編集
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。
【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞 2022年6月作品集出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞
第二回ひなた短編文学賞 双葉町長賞
いつも本当にありがとうございます!
ログインするとコメントを投稿できます