君とお酒を③

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飲みつけの店の立ち飲み席、喧騒を冷めた眼で傍観する美女一名。
みどりなす黒髪。白い毛皮。血の様な唇が蠱惑的だ。
よし、今夜のターゲットは彼女に決めた!

「君、退屈そうだね。何飲んでるの?」
「ブラッディマリー。私には薄いわ」
なかなか積極的だ。あどけない顔のわりに、遊び慣れた様子。
「お近付きの印に、一杯驕ろう」
「まぁ嬉しい。ちょうど欲しかったの」
「それは好都合。ところで一応訊くが、君は幾つなんだい?」
「さぁ、幾つかしら?忘れちゃった」
血の色の唇がかっと開き、長い牙が僕の首に噛み付く。
……まずい。こ、これはもしや、吸……
「あら嫌だ。まっず~い!獲物選び、失敗しちゃった~!」

「吸血鬼か……」
悪態吐いて大股に闊歩する背中。僕はさめざめと泣いた。
「命拾いした。さすがに少し、考え直そうかな」
ファンタジー
公開:19/01/17 00:00
更新:19/01/16 23:47
夜の住人達のラブゲーム ③吸血鬼

創樹( 富山 )

創樹(もとき)と申します。
前職は花屋。現在は葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書き(もどき)をしております。
小石 創樹(こいわ もとき)名にて、AmazonでKindle書籍を出版中。ご興味をお持ちの方、よろしければ覗いてやって下さい。
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ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.12執筆参加
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。

【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞。2022年6月アンソロジー出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞受賞

いつも本当にありがとうございます!

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