普通殺人

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「おっとっとっと」という声とそれ無視してダバダバと溢れて注がれるビールを見ていた。

遡ればもう随分前になるが、世界的に有名な作家だかが「普通とは異常、普通は殺せ」と呟いて、それが一気に世界中に広がった。

みんな普通にうんざりしていたのかもしれないし、もしかしたら上手くいかない全ての事を「普通」という物のせいにして来ていたのかもしれないと思った。

「君、ほら枝豆来たよ」上司がそう言ってビチョビチョに濡れた腕のまま枝豆の入った皿をわたしによこした。

わたしは「ありがとうございます」と言って枝豆を皮ごと食べた。それを見た上司と同僚は満足げに「やるねぇ」と言って次々と皮ごと枝豆を食べた。

外に出ると雨が降っていた。傘はどこにも開いていない。わたしは鞄から小さな折りたたみ傘を出して、さした。

同僚たちが一斉に振り返りわたしを見た。そしてその目はみるみる羨望の眼差しに変わっていった。
ファンタジー
公開:19/01/15 11:03

二十一 七月

にそいち なながつ

まずは100話お話を作るのが目標です。

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