叔父の高速シンキング

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玄関口で、またも思い留まりそうになって、そんな自分を恥じ、えいやっと飛び出した。
扉に鍵を閉める際にやや震える右手を左手で押さえつけ、そしてその左手までもが震えているならば、そいつを押さえつける手は存在しないことに今更ながらに思い至り、極力流暢な発音を意識してオーマイガーと呟いた。その際の舌の緊張状態はまるで尼さんに網の上で焼き上げられる寸前の巻き貝のような、一種の凡庸な終末観を醸していたかもしれない。ともあれ、いまや水温の方が暖かいのであれば、もはやどちらがマイホームかわかったものではないというものだ。
私は独り苦笑し、振り向きざまに誰かのノートパソコンをかかと落としで叩き割った。ノートパソコンはかかと落としで叩き割るものではない。
「おかみ、とりあえず酒をくれ。そして、水面で混ざり合った絵の具のあわいから間抜けに顔を出すからさ、またいつものように、それを写し取ってくれよ」
「いやです」
青春
公開:19/01/14 23:09

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