境界線にて

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薄暗い住宅街、ゆっくりと歩く。街灯の光と影の境界線、いろんな表情の街並み。全て今を生きていると思わせてくる材料。悔いのないように生きる為に全て忘れないように。
そんな風に思うようになったのは十代の頃に出会った女性の忘れ物との出会いからだった。
彼女の落し物は、手作りのペンダントトップ。それを探しているところを通りかかった。僕は何故だかほっとけなくて一緒に探すことにしたのだけれど。
「見つかっても意味がないんです」
女性は涙を浮かべながら呟いた。僕が首を傾げると細い指先が触れる。
「私は彼女に会えないの」
指先は異様に冷たい。
「この先にあるジュエリーショップで働いている葉月さんに渡して貰えますか」
そう言った瞬間、ティアドロップ型のペンダントトップが現れ、女性は消えた。
葉月さんに会いに行くと、あの女性は事故で亡くなっていたと言う。僕はあの人の思いを繋いだのだと理解した。
ファンタジー
公開:19/01/14 03:46
ペンダントトップ 境界線

( ネットの海 )

思いついた時に閃きと共に。
意識しているのは難解な言葉を使わず、端的に。

 

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