白くなっても

5
5

「ごめんね」
そう言って君は僕の前から消えた。
あの日、カステラは僕の前から姿を消して
ただのあんこになってしまった。
どうしてこうなった。思い返しても些細なことだった。
「パサパサはいらない」
気の乗らなかった僕は心無い言葉を発していた。
あんこがしっとりとしていられるのはカステラがしっかりと包んでくれていたから。
あんこだけになってカサカサに乾いてゆく表面は徐々に白化していった。
乾ききったこの世界で僕を求めるものはいない。いずれ朽ちる身ならいっそ…
「ダメ!」
「どうして…」
振り返ると僕は暗闇に覆われてしっとりと、ふわふわした優しさに包まれた。
「これならどう?」
「乾ききって凍える前に包めて良かった」
僕らは凍った世界へと導かれていく。
これなら白っぽくなっても分からないからと、カステラは言った。
冷凍庫の中で徐々に身は固くなり、そしてアイスどら焼きになった。
ご馳走様でした。
ファンタジー
公開:19/01/16 14:16
どら焼き

空音ココロ( blue in the black )

ショートショートは星新一さん、筒井康隆さんが好き。
空を見上げてぼーっとするのも好き。
抑揚のない平らな脳みそで
蜘蛛の巣を徘徊しながら思い付きで生きています。

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容