アルジの声

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めんどくさ。わたしはぽつりとそう呟くと掛かりつけの婦人科の帰り道をとぼとぼと歩いた。

内臓と話せる装置が開発されたと聞いた時は正直鼻で笑ったものだが、がんの早期発見や治療に当たり前に使われるようになってからはわたしも普通にそれを付ける様になった。

「そういう訳にもいかないよ、アルジは今、体の伝達機能が変なんだよ?」

わたしの内臓たちはわたしを「アルジ」と呼ぶ。文字通り「主人」という意味だが、わたしはそれが『アルプスの少女ハイジ』の略みたいで好きだった。

すると、いつも気弱な胃袋が「薬を飲みたくない」と言い出した。いい子だから、と諭すのはいつも脳の役目で、そのうちに俺もわたしもと関連臓器たちが喋り出す。

自分の中から聞こえる小競り合いを聞きながら、この装置を付ける前の事を思い出していた。

「この装置って、やっぱりインチキなんじゃないかな」

ぼんやり思うこの声の主人を探していた。
ファンタジー
公開:19/01/16 11:00

二十一 七月

にそいち なながつ

まずは100話お話を作るのが目標です。

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