ローカル動物園

10
9

「この間、初イノシシ見てさ。まさに『いの一番』ね。猪突猛進って喩えかと思ったけど、マジ直線ダッシュ。スピード半端ねぇの。あと……」
折しもイノシシ檻の前でイノシシをリスペクトする友人に並行しつつ、俺は閉口していた。
人もまばらな真冬の動物園、平日昼間に野郎二人。状況以上に気分が寒い。フリーパスを使い倒し、ゲートも顔パスと聞き、覚悟はしたが。
「山中、そろそろ、次行かね?」
「悪ぃ悪ぃ。じゃ、次はカモシカ」
勘弁してくれ。キリンやシマウマやトラには目もくれず、クマ、ウサギ、タヌキ、キツネ。地方色豊か過ぎる『里山展示』に、開園から4時間。同じ里山でも、人気のサル山は10秒でスルー。既に飼育員もどん引きだ。
「カモシカは恐いよ。体当たりされたら、車とか全損。……あぁ勿体ねぇ。天然記念物じゃなきゃな~」
真剣に勘弁してくれ。涎垂らして『食材』目線で解説するな、野生の王国の住人め。
「……狩りてぇ」
その他
公開:19/01/15 17:09
うちの近所=人間<野生動物

創樹( 富山 )

創樹(もとき)と申します。
葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書きもどきをしております。
小石 創樹(こいわ もとき)名にて、AmazonでKindle書籍を出版中。ご興味をお持ちの方、よろしければ覗いてやって下さい。
https://amzn.to/32W8iRO

ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.13執筆&編集
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。

【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞 2022年6月作品集出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞
第二回ひなた短編文学賞 双葉町長賞

いつも本当にありがとうございます!

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容