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スーパーで榊が目に入って、墓参りを思い立った。車で5分。中国産の榊158円×2束の出費。
久しぶりの墓地は妙に明るい。雑木林が無くなっているのだ。
凹んでいないバケツと、グラグラしない柄杓を選んで水を汲む。手袋が片方落ちて汚れている。
墓石に僕がくっきりと映る。僕は榊を取り出し、誰かが供えた国産の本榊450円×2本を捨てる。
拝んで目を開けると、墓石に僕の顔がぼんやりと歪んでいる。隣の墓石に「爪きり」が置き忘れてある。僕は無言でバケツと柄杓を戻す。手袋が片方ないのに気づく。きっと車の中だ。
親戚の墓に国産の本榊が6本挿してある。別の墓に、ポンポン咲きの菊が三つ揺れている。振り向くと、墓の背後に、墓石の数だけ、墓石よりも長い影が、みんな僕の形をしている。
「僕はここの墓に入れない」
車中は冷たく、急速に汗が冷えていった。歯の根も合わないほどの震えが、いつまでも止まらなかった。
久しぶりの墓地は妙に明るい。雑木林が無くなっているのだ。
凹んでいないバケツと、グラグラしない柄杓を選んで水を汲む。手袋が片方落ちて汚れている。
墓石に僕がくっきりと映る。僕は榊を取り出し、誰かが供えた国産の本榊450円×2本を捨てる。
拝んで目を開けると、墓石に僕の顔がぼんやりと歪んでいる。隣の墓石に「爪きり」が置き忘れてある。僕は無言でバケツと柄杓を戻す。手袋が片方ないのに気づく。きっと車の中だ。
親戚の墓に国産の本榊が6本挿してある。別の墓に、ポンポン咲きの菊が三つ揺れている。振り向くと、墓の背後に、墓石の数だけ、墓石よりも長い影が、みんな僕の形をしている。
「僕はここの墓に入れない」
車中は冷たく、急速に汗が冷えていった。歯の根も合わないほどの震えが、いつまでも止まらなかった。
その他
公開:19/01/15 14:53
更新:19/01/15 19:17
更新:19/01/15 19:17
星新一さんのようにかっちりと書く素養に乏しく、
川端康成さんの「掌の小説」のように書ければと思うので、
ショートショートとはズレているのかもしれないです。
オチ、どんでん返し、胸のすく結末。はありません。
400文字、おつきあいいただければ幸いです。
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