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記憶の奥底の暗闇の中・・・

黒い物体は私の顔を見ながら、口元をおさえ嗤っている。

「僕のことを覚えている?」

私は首を横に振る。

顔のない影は、高笑いをした。

「だよな。だって、僕もまさか光の自分に出会えるとは思ってもみなかった」

「光?」

「そう。人間にはいくつもの人格を持っていて、君は光を携えている」

「どうして、ここに連れてこられたの?」

「こっちがききたいさ。お前、光を忘却しただろ」

「忘却?」

「そうさ。人間は慈悲の心を失い、光を奪われると、この場に連れてこられ、同じ境遇に立たされるという訳さ」

「どうしたら、ここから出られるの?」

「もう無理だよ。暗闇の矯正施設からは、誰も抜け出すことは出来ない。もう、光は遮られた」

「僕はどうなるの?」

もう一人の自分は光の僕から表情を奪った。
私は無くなった顔をなで回し、渦にのみ込まれた。
ミステリー・推理
公開:19/01/13 20:34

神代博志( グスク )









 

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