仮面

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不安定で脆い人たちの物語が好き。読むほどに自分の不安定さが重なり、私だけではないのだと安心する。自発的に、それを求めている。

自分の写真の顔と、鏡に写るそれは違っている。完全休日の日に撮った免許証の写真を見た知人は誰も彼も、「笑ってないと別の人みたいだね」と、まじまじ写真と顔を見比べて言う。だけど、そっちが本当の私なのに、と心のなかで呟くのを繰り返す。その時の私は、わざと真面目な顔をしてみたりして、そうだよね~、と茶化している。

家に帰り、すぐに私はそれを顔からむしると、コートの横にかける。三日月型の目と口元を見て、改めて、間違っても寝室に置きたくないなと思った。

ある日帰宅して、いつものようにそれを取ろうとすると、それは顔からとれなくなっていた。躍起になって引っ掻くけど、薄笑いの顔に傷ができるだけだった。

私の知っている私は、私すらもう分からないものになってしまった。
公開:19/01/13 00:23
更新:19/01/13 06:47

綿津実

自然と暮らす。
題材は身近なものが多いです。

110.泡顔

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