ある仮説

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 それは音も無く天空から落ちてくる、巨大な円筒形の塊だった。
 丸い影、として宇宙の彼方に観測されたそれは、直径数センチ程だが、長さは宇宙の直径を超える。それが、光速を遥かに凌駕する速度で大気圏に突入して、築三十年の木造平屋建ての屋根から、トイレの扉の前の廊下を貫通し、再び天空へ飛び去っていった。
 その後、宇宙を貫通する直径数センチの円筒形の穴の底から、その直径よりも小さな金属製の棒が、せり上がってきて、宇宙ごと串刺しにしてしまう。
 トイレの前に突如としてそそり立った直径数センチの円筒形の未知の金属製の長い棒。地球上のあらゆるLDKの前に、この棒が顕れた。
 ある不動産屋が「まるで二穴パンチのファイルみたいだ」と言った。
「三次元の情報が二次元でファイリングされるのなら、四次元の情報は三次元でファイリングされるに違いない」
 もっとも、三次元世界の住人には、確かめようもない仮説である。
SF
公開:19/01/11 17:10

新出既出

星新一さんのようにかっちりと書く素養に乏しく、
川端康成さんの「掌の小説」のように書ければと思うので、
ショートショートとはズレているのかもしれないです。
オチ、どんでん返し、胸のすく結末。はありません。
400文字、おつきあいいただければ幸いです。

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