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先日、交通事故に遭って入院している父親の容態が急変したと、実家に連絡があった。
僕はそれを聞いて、急いで病院に向かった。

今実家には、父と母、それから中学三年の弟がいる。
今父に居なくなられるのはとても困る。僕は、どうしても実家に戻れない訳があるのだ。

父がいる個室に着くと、弟と母はすでに部屋の隅で、医師が処置を行っているのをただ動けずに見つめていた。


父は
ベッドに横たわる自分と、家族の姿を少し上の方から眺めていた。

僕は、弟の産まれる前に、命を落とした。そのため弟は、僕の顔を知らないし直接会ったこともない。
父も母も、今の僕の姿は知らない。

父に近づく。
彼は少し戸惑ったが、ぱっ、と顔色を変えた。

「……大きくなったなぁ」
何か溢れるのを必死で堪えた笑顔。

分かるのか。
胸がじわりと温かくなる。

もうそれだけでいいと思えた。

「父さん、まだこっちに来ちゃ駄目だよ」
その他
公開:18/10/17 22:27
更新:18/10/18 00:17
家族

たけなが


たくさん物語が作れるよう、精進します。
よろしくお願いします!

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