凶花～花津波～

地震か？都内のビル街を歩いていた私は思わず身構えた。足元が大きく揺れ、ドドドーッという轟音とともに、道路がひび割れると、直径数十メートルもの巨大な花が地面を突き破って次々と現れた。
花は道路を走る車や歩道を歩く人々を飲み込み、それは、巨大なラフレシアを思わせた。肉のような赤黒く艶めいた花弁が広がり、腐ちたような匂いを放っている。

人々はパニックになって逃げ回り、私も必死に建物を目指して走った。ビルに逃げ込み、上るエレベーターから下を見る。道路を花が埋め尽くし、まるで花の海の中にビルが浮かんでいるようだ。

ガクンと音がして、エレベーターが止まった。ズズッとビルが傾く。周囲のビルが次々と花に飲み込まれ消えていくのが見えた。

私はガクガクと震えながら、ただ、獣のようにオオーッと嗚咽し叫び続けた。

ボコボコと泡立つように湧き出た花は、一掃するように全てを飲み込み、海のように流れて行った。