チョコムースとカプチーノ

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 私は、チョコムースを金の匙でぐちゃぐちゃにかき混ぜる。姉さんはきっと、私が強情を張っていると思うに違いない。姉さんの幸せな瞳は、私を遙か上空から見下ろしている。聖母マリアのような顔で、カプチーノのカップに淡いピンクの口紅の跡を残す。念入りな化粧。きっとこの後、男と会うのだろう。つまり私は単なる時間潰しに使われているだけなのだ。
 苛立ちが私を残酷にする。姉さんのせいだ。姉さんは姉さんの幸せが私の幸せのヒントになるなどと思い上がっている。姉さんの幸せなんて、誤解と思い込みで出来た、ちんけな代物に過ぎないということを、徹底的に思い知らせてやりたくなる。
 午後の光は私の右後方から射している。私はぐちゃぐちゃのチョコムースの中に金の匙を押し込む。指についたチョコを、舌を伸ばして嘗め取って、微笑んでみる。姉さんはカプチーノを飲み終え、少しスマホを気にする。
「お姉さん」
「なあに?」
「幸せ?」
青春
公開:18/10/18 23:07
更新:18/10/23 18:32

新出既出

星新一さんのようにかっちりと書く素養に乏しく、
川端康成さんの「掌の小説」のように書ければと思うので、
ショートショートとはズレているのかもしれないです。
オチ、どんでん返し、胸のすく結末。はありません。
400文字、おつきあいいただければ幸いです。

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