うろこ

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マリさんは泥棒だ。
その日、マリさんは黒い小箱を持ち帰った。開くとそこには玉虫の羽の様に緑に光る鱗があった。
マリさんは途方にくれていた。これは昔々龍から剥がされたと言い伝えられる鱗で、宝石と間違って盗まれそうだったのを掠め取ってきたらしい。
確かに宝石みたいだ。僕は鱗に手を伸ばした。
「これ、逆鱗なんだ。触ると龍が怒って空から雷が落ちてくるやつ」
なんて厄介な物が僕の部屋にあるんだ。僕は手を引っ込めて凍りついた。
「本当の持ち主に返したい」とマリさんは言った。中国皇帝の末裔に返しに行くのかと思ったけれど、マリさんの言う本当の持ち主とは龍のことだった。
龍は海に棲んでいるんじゃないか。僕らは浜辺へ出掛け、手で触れないように鱗をそっと波に乗せた。
突然空が暗くなり、僕らの真正面を稲妻が走った。
「ワカメが触っちゃったかも」
僕は目がチカチカした。
ファンタジー
公開:18/10/18 20:38
更新:18/10/19 18:07

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