泉の中の虹
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白百合の花束を抱え、ささやかな花嫁衣裳に包まれた君。
薄化粧を刷いた、輝く笑顔に目が痛み、もっと別の色を添えようと思った。
切れなずむ雨を睨む。重く翳った鉛雲に、微かに降りたきざはし。走り出て引き下ろそうと手を伸ばす。
光が刻む幻の端の、ちぎれた裾がほつれ、無数の滴が昊に散った。
霞んだ視界に捉えきれない霧雨に打たれ、俯けた足元の水たまり。点々と続く遥か先、誰がこぼしたか、巨きな泉が鏡を広げている。
そうっと歩み寄り、ひざまずいて差し出す両手の、掬い上げた掌に揺らめく、透明な七色。
息せき切って戻る。
鎖された扉をこじ開け、ヴェールの下のまだ短い髪に、半分割いて結ぶ。三色半の彩りを連れ、君は駆け足で空へ嫁いだ。
君は今も、僕の部屋で無邪気に笑う。あの日と同じ、ガラスが隔てる平面世界で、髪に三色半の片割れを結んで。
再会を果たす時、二つに分かった細い緑が、二人のよすがであればと祈る。
薄化粧を刷いた、輝く笑顔に目が痛み、もっと別の色を添えようと思った。
切れなずむ雨を睨む。重く翳った鉛雲に、微かに降りたきざはし。走り出て引き下ろそうと手を伸ばす。
光が刻む幻の端の、ちぎれた裾がほつれ、無数の滴が昊に散った。
霞んだ視界に捉えきれない霧雨に打たれ、俯けた足元の水たまり。点々と続く遥か先、誰がこぼしたか、巨きな泉が鏡を広げている。
そうっと歩み寄り、ひざまずいて差し出す両手の、掬い上げた掌に揺らめく、透明な七色。
息せき切って戻る。
鎖された扉をこじ開け、ヴェールの下のまだ短い髪に、半分割いて結ぶ。三色半の彩りを連れ、君は駆け足で空へ嫁いだ。
君は今も、僕の部屋で無邪気に笑う。あの日と同じ、ガラスが隔てる平面世界で、髪に三色半の片割れを結んで。
再会を果たす時、二つに分かった細い緑が、二人のよすがであればと祈る。
ファンタジー
公開:18/10/16 12:59
オマージュ いづみ嬢 西日の朝日
創樹(もとき)と申します。
葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書きもどきをしております。
小石 創樹(こいわ もとき)名にて、AmazonでKindle書籍を出版中。ご興味をお持ちの方、よろしければ覗いてやって下さい。
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ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.13執筆&編集
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。
【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞 2022年6月作品集出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞
第二回ひなた短編文学賞 双葉町長賞
いつも本当にありがとうございます!
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