不倫キノコ

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私は狙われている。
ある有名料理家が私のキノコの味を絶賛したことで、連日取材が殺到した。
待ち伏せや尾行もあって、私は会社に通いづらくなった。社内にも私のキノコを摘もうとする上司がいて、恐怖のあまり辞表を提出した。
このキノコは珍しい種で、世界中で私の頭皮にしか生えない。キノコ学会はこの種に、のりこと私の名前をつけた。
香りマツタケ味しめじと昔は言ったが、今は香りのりこ味のりこで、私を摘もうとする人々が世界中から押し寄せる。
家族や暮らしが危険に晒される中、助けてくれたのは社長だった。
社員全員の前で私の辞表を破って、「我が社は彼女を守る」と宣言。キノコを狙った幹部には「若い芽を摘むな」と一喝した。
それ以来、ジメジメしていた社内は風通しが良くなり、皆が働きやすい会社になった。
信頼は秋風のように心地いい。
なのにのりこは社内不倫に走った。キノコにはジメジメが必要だと、ため胞子をついて。
公開:18/10/15 13:45
更新:18/10/29 10:23

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