たぶんミッフィー

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「ママね、子供の頃、人参が嫌いだったの」
息子が「そうなの?」と目を丸くした。
「でね、ある日、おばあちゃんが人参の料理を作ってくれてね。お皿が人参のオレンジでいっぱいだった。でも食べたら凄く美味しくて。なんで美味しいの?って聞いたら、この魔法のスプーンは嫌いな物が大好きになるのよって」
「魔法のスプーン?」
「兎のスプーンでね。それのおかげでママは人参が大好きになったの」
それはただのスプーンで。私は甘く煮込んだ人参グラッセの魔法にかかっていたのだ。
昔の懐かしんでいると「パパ遅いね」と息子が呟いた。
旦那とは昨夜から喧嘩中だ。
「はぁ…」と小さく溜息。

夕食の後、「お風呂作ったよ」と息子が笑顔で風呂場から戻ってきた。
何か悪戯したのかと風呂場を覗くと、バスタブに兎のスプーンが置かれていた。

嫌いな物が大好きに…

そっか。
息子に心配されていたか。
よし。
旦那と仲直りしてやるか。
その他
公開:18/10/17 12:29
家族と言えばこんなの書いてた 魔法のスプーン 月の文学館の初採用作品

のりてるぴか( ちばけん )

月の音色リスナーです。
ショートショートって難しい。
最初の頃は400字は短すぎるなんて思ってましたが、色々書くうちに400字に無限の可能性を感じるようになりました。

読んだ人の心が少しでも動いたらいいな。何かを感じてくれたらいいなと思って書いてます。

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